浅野・クリューナ夢衣さんが登場しております。 登場の許可、台詞など背後さんにご協力頂きました。感謝! ちょっとした裏話があるんですが、それは次回に。 「こんにちは、双葉」 呼ばれてはっと我に返る。クリュ………浅野・クリューナ・夢衣、私の部屋までよく遊びに来てくれる友人だ。 どうやら考え事をしていて、来たことに気づいていなかったらしい。 「いらっしゃい、クリュ」 「今日はね、双葉に報告することがあるんだ」 いつものように返事をした私に、クリュがちょっと照れたような、それでいて真剣な表情で言う。 何かしら?想像もつかない。もしかしたら姉様が何かしでかしたのかしら。 「あたし、清己さん……五百蔵先輩と付き合うことになったの」 「あら、おめでとう」 五百蔵先輩のことはよく知っているとは言えないけれど、良い人だと思っている。 意志を見せるべき時を知っている人。多分、強い人。………いや、多分ではないのだろう。クリュが選んだ人なのだから。 その後私たちはたわいのない話をしつつ、クリュの持ってきたアップルパイを食べた。 私はお世辞にも食べ物の味が分かる方ではないのだが、今日のパイは何となくいつもよりも甘い気がした。 やがて時間が過ぎ、クリュが帰る時間になった。2人だけだったので、私は玄関まで見送りに出た。 「おやすみ、双葉。またね」 「おやすみなさい、クリュ」 背を向けて外へ出て行くクリュの後姿を見ていると、私の中によくわからない衝動が生まれた。 「………クリュ」 何が言いたいのか、何をしたいのか、自分でもわからないままに思わず呼び止める。クリュが振り返り、不思議そうな顔をして私を見ている。暫く私たちは見詰め合っていた。 片方が混乱して周囲を全く見ていないような状況を、見詰め合うと呼ぶべきかどうかはわからないけれど。 黙ったままの私にクリュが近づいてくる。不思議そうな表情はもう浮かべていない。いつもの………いや、いつもよりも優しい表情。まるで私が何を言いたいのかわかったかのように。 「何か……聞きたい?」 クリュの言葉に私は頷いた。そして私は自分がクリュに質問をしたいと思っていることを知る。だから尋ねた。 「………好き、ってどんなもの?」 口に出してしまってから、何となく罪悪感が沸く。ズルをしているような気分。 クリュの綺麗な青い瞳に自分が映っているのに気づいて、落ち着かない。私が耐え切れなくなって目を逸らそうとしたタイミングでクリュが答えた。 「好きっていうのは、一緒に居たいって気持ちじゃないかな。だから――」 「………だから?」 口を挟むほどの間があったわけではないのに、思わず口を挟んだ。何故だろう、私は焦っているようだ。 「双葉が紀流先輩と一緒にいたいと少しでも感じてるなら、あとは双葉が一緒にいようとするかどうかだよ」 「………っ」 沢山の人が知っているのは解っていた。………筈だけど、改めて他人から言われると落ち着かない。ざわざわする。 私が混乱しているのを分かっているのか分かっていないのか、クリュが最後に付け足した。 「あたしがそう思ってるだけだけどね」 それを聞いたときに何かがストン、と落ちたような気がした。 『好き』は色々あるのだ。想いを抱く生き物の数だけ。いや、ひとつの生き物の中にもそれは無数にあって………きっと正解がないのだ。 違う。もしかしたら正解はあるのかもしれない。でもそんなことは関係ない。だって、おもうのは自由でするのは勝手なのだもの。 目の前にいる友達が、好きというのは一緒に居たいっていう気持ちだと言った。自問する。………うん、一緒に居たい。 灰原さんが困った顔をするのが嬉しい。私のことを考えている時の顔だから。他のときは知らないけれど、私の側でその顔をしているときは自分がそうさせたと確信できるから。 私は灰原・紀流さんのことが好きだ。それが『特別』なのかは分からないし、知らない。『特別』じゃないといけないのなら、私が決めてしまえばいい。 『あとは一緒にいようとするかどうかだよ』うん、一緒にいようとしよう。 ………その為に、聞きに行こう。 「クリュ、有り難う」 そう言ってクリュの瞳を見る。そこに自分が映るのが、今は怖くない。 |
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