土蜘蛛の巣

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zoom RSS 死者の帰る時期に

<<   作成日時 : 2010/09/01 07:08   >>

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それはある墓の前での出来事。
………ある少女の、独白。


「そう言えば、死人が帰ってくる時期なのね」

そんな時期だから自分は来たのだろうか?と己に問いかけるような言葉。

「知っているかしら。無限繁栄が使われると、土蜘蛛は本当に帰ってくるのよ?」

死者が帰る、そんな常識外の出来事を少女は当然のように語る。

「………生命賛歌にはそんな力はないのよね。むしろ、そのせいで馬鹿なヒトが増えているのかしら」

ふ、と誰かが苦笑したような気配。きっとそれは少女の苦笑なのだろう。

「まあこうやって語りかけているのも、とても馬鹿なことよね」

少女は周囲を見回し、人影のないことを確認した。

「命がけで戦って、戻ってきてそのまま学校行事で騒ぐ。………おかしな場所だわ。普通の神経ではないわね。でもサンダーバードのヒトだったかしら、いつか言っていたわ。それこそが生命賛歌の力の源だって」

一度視線を落とし、上げる。表情は悲しそうな、けれども笑顔。

「実は私ね、恋をしたのよ。………もう振られてしまったのだけれど」

少女は、まるで誰かが聞いているかのように話す。

「ねえ、私にもちょっと判ったのかしら?そういうこと。………だから、だからやってみるわね。結社の団長。あまり熱心に勧誘して大勢集まって、という場所でもないだろうから、それなりに」

今はいない誰かを思い出しつつ少女は語る。

「ただ、こういう場所を気楽だと思うヒトが、退屈しない程度にお話出来る場所として」

緩い風に混じって、幽かに声が聞こえたような気がする。少女はふぅ、と溜息。

「私も学園に毒されたわね。人間みたいになったかしら。本当に死人が帰ってきて、話しているような気になってしまったわ」

何時までも留まろうした魂、それこそが残留思念となるのなら、その『気配』も留まろうとすれば、じきにゴーストと成り果ててしまうのだろう。

「なったらなったで、退治するだけなのだけれど」

くすりと笑う。それはもう、本当に誰かと会話しているかのよう。

「でも、出来れば勘弁して欲しいわ」

――俺もだ――

「そう、じゃあこれっきりにしましょうね。………いつだったか、前に言われたことがあるのよ。別れの挨拶をしたときに『今生の別れでもないだろうに』みたいなこと。でも、今回ばかりは私が正しいわよね」

常識外の死を迎えた者は、忘れ去られ行く運命にある。こうして誰かが尋ねて来るだけで、嬉しいものなのかも知れない。寂しがりやにとっては、特に。少女はいつもの、しかし意味は違う言葉を告げる。

「おやすみなさい。………さよなら」

去ろうとした少女が足を止めて振り返った。その顔に浮かぶのは悪戯っぽい笑み。

「私は今も人間はあまり好きではないけれど」

消え行く誰かに届くように。普段の彼女を知る者が見れば驚くような大きな声で。

「来訪者を嫌う人間は、嫌いではないわよ」

今度こそ振り返ることはなく、少女はその場を去って行った

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